乾坤一擲

「乾」は天、「坤」は地。
天と地の神に身命を託して賽を投げるのが乾坤一擲。
「天地、一擲に賭す」と李白漢詩にある。
いつかそんな全身粟立つような大勝負に我が身を
……と願うが、ついぞその機会は得られていない。
要は「弱っちい」のである。
小勝ちしたといっては飲み、
小負けしたといってはまた飲む。
だからこそ「憤死」することなく、ここまで生きてこられた。
勝ち負けは所詮、西行の説く、結びかつ弾けるうたかた。
「勝ち過ぎず、負け過ぎず」くらいが丁度いい。
吉田兼好もその書「徒然草」で、
「勝たんとして打つべからず負けじと打つべきなり」
と勝負の極意を開陳している。
誠に高説ごもっとも。
ただ、最後の最後だけは、やっぱり「李白」でありたい。
たとえうたかたであろうと、風車に挑むドン・キホーテであろうと、
大河を堰き止めるべき気概のもとに乾坤一擲。
寿命が尽きる前に一度勝てばいい。
それでチャラではないか。
清水成駿

http://pc.keibalab.jp/より引用