2008-03-14 ほろ苦い 物には“五味”などというコトバではいいつくしようのない、 おびただしい味、その輝きと翳りがあるが、 もし“気品”ということになれば、 それは“ホロにがさ”ではないだろうか。 ことに山菜のホロにがさである。 それには“峻烈”もあり、“幽邃”もこめられているが、 これほど舌と精神をひきしめ、洗い、 浄化してくれる味はないのではないだろうか。 ひとくちごとに血の濁りが消えていきそうに思えてくる。 (開高健)